かず @kazubo34

☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.053 ☆  ※さっしー関連抜粋

■福田雄一のさっしー観

宇野 AKBファンには『指原の乱』(13年10月~14年3月)でおなじみの福田雄一さんですが、実は僕は福田さんがAKBに関わる以前に、インタビューさせてもらったことがあるんですよね。

福田 あのときの宇野さんのインタビューは本当に気に入っているんです。引っ越ししたとき、妻に雑誌類を全部捨てられたんですけど、あれだけは残してもらいました(笑)。

宇野 そう言ってもらえると嬉しいです(笑)。去年『AKBINGO!』で再会して、そしてまた『ヨシヒコ』あたりのことを聞きたいなって思っていたら『指原の乱』がもう面白くて仕方なくて……。もう福田雄一と指原莉乃のコンビもここまできたか、と。

福田 彼女とは、『ミューズの鏡』(12年1~6月)の撮影初日に初めて会ったんです。そのときに何となくお芝居を付けてもらいながら一日一緒に過ごして、「ああ、この子で『裸足のピクニック』をやりたいって思ったんですよ。

【編集部注】『裸足のピクニック』は矢口史靖監督の初監督映画作品。1993年公開。ある女子高生がどんどん不幸になっていく姿を描いたブラックコメディー。指原主演の『薔薇色のブー子』は本作の内容を彷彿とさせる。

『裸足のピクニック』って、無表情で感情がよく分からない女の子がどんどん不幸に見舞われていく話じゃないですか。無表情で何考えているかわからないということは、よほど佇まいの面白さがないと、その子を中心に映画は回っていかない。で、さっしーって決して芝居が上手ではないですし、表情がうまく作れるわけでもないし、女優としてなんの取り柄もないけど、とにかく佇まいが非常に面白かったんですよ。ポッと立たせた時になんとなくほっとけない、つい見てしまう。それで『裸足のピクニック』がはまるなあと。

宇野 当初さっしーとはどんなコミュニケーションを?

福田 当時の僕は『勇者ヨシヒコ』で話題になったので、けっこう仕事の引き合いがある状況でした。でも指原は、僕の作品は1本も見たことないって言うし、そもそも俺のこと全然知らないって(笑)。

宇野 さすが、さっしーですね。

福田 でも、俺のこと知らないっていうのが逆に嬉しくなっちゃって。好きなんですって言われると背負うものがあるじゃないですか。好かれてるからがんばらなきゃとか。でも、知らないって言われるといい感じでスーって気を抜けるんですよ。これは楽しめるぞって。

宇野 なるほど、これでいじり倒せるぞと(笑)。

福田 あと、あいつが待ち時間にセットの隅に座って、ボーッと考えているのを見ると、いじりたくてしょうがなくなるんですよ。「そんなこと言わないでくださいよー」って困らせてやりたい。生意気なこと言うと、秋元さんもきっと同じ気持ちなんだと思います。その感じが麻薬みたいなもので、さっしーと離れられない(笑)。業界の方は、僕がずっと秋元さんにさっしーと組まされてるって思ってるかもしれないんですけど、すべてのドラマに僕のほうから呼んでいるのが紛れもない事実です。

宇野 さっしーはもう「福田ファミリー」に入ってるんですね。ムロツヨシさんや山田孝之さんと同じで。

福田 彼女の中ではそうなってないですけど(笑)。すごいのは、秋元さんやテレビ局や電通の方たちが集まって喋っているとき、その8割9割は指原の話なんですよ。アイツこんなこと言いやがったよ、ムカつくだろ、とか。秋元さんは「いい大人が集まって指原の話ばっかりするのムカつくから、別の話をしようぜ」って言うんだけど、必ず10分後には指原の話に戻ってて、3時間とか話してる(笑)。そんな女の子ってなかなかいないですよね。

宇野 一昨年の8月に共著で出した『AKB48白熱論争』って、最初は総選挙の後の感想戦から始まっているので、さっしーのスキャンダルの前なんですよ。にもかかわらず、よしりんがさっしーのことを嫌いだっていうのがきっかけで、ずっとさっしーの話ばっかりしてるんですよ。その後、もう1回収録したんですけど、それまでの間に例の文春のスキャンダルがあって、また彼女の話。気がついたら俺たちはさっしーの話しかしていなかった。要するに、世界は指原さんを中心に動いてるんですよ(笑)。

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■『指原の乱』がネタにした「電通」と「テレビ」

宇野 さっしーはその後、福田さんの監督作『俺はまだ本気出してないだけ』にも出演し、そしてレギュラー番組として『指原の乱』が生まれるわけですが、あれってすごく変な番組だと思うんですよ。あの企画はどうやって始まったんですか?

福田 僕のドラマも映画も、発想の原点は基本的にはバラエティなので、やってないとすごく不安なんですが、そのとき僕が関わっていたのが『新堂本兄弟』だけだったんです。あれはトークバラエティなのでバラエティ脳を使うってとこまで行き着いていない。それで電通さんとかに、バラエティをやらせて欲しいってことをずっと言っていたんですよ。そうしたら、テレ東の深夜2時くらいだったら全然いいですよって言われて、『水曜どうでしょう』が真っ先に浮かびまして。それで、誰とやりたいかなって考えて出てきたのが、さっしーだったんです。

宇野 福田さんの考える『水曜どうでしょう』の魅力はなんですか?

福田 『水曜どうでしょう』の醍醐味って、大泉洋さんのとめどない文句だと思うんです。この前、大泉さんに直接聞いたんですけど、「俺は正論を言ってるだけなんだ。ただ立場が弱いだけなんだ。俺は常に正論を言う弱者なんだ!」って(笑)。それはすごく良い言葉で、指原にも当てはまる。彼女もずっと正論を言っているんですよ。なんでこうじゃないんだ!

って。それをあの絶妙なブサイク面で言うから、面白い。それを秋元さんに言ったら「たしかにあいつがテレビで、ちょっとそこは電通さんでなんとかなんないですかね~って言ってたら面白いよね」って言ってくれたんです。

宇野 電通(笑)。

福田 じゃあ指原が電通っていうワードを口にできる番組って何だろうと考えたら、やっぱりあいつの絶妙な失礼を駆使して、業界のものすごく偉い人に食い込んでいって、自分の夢を叶える内容かなと。それでタイトルは『指原の乱』が一番良いだろうなと思ったわけです。

宇野 『指原の乱』にはビックリしましたね。構造自体は昔の80年代から90年代にかけての、テレビに勢いがあった頃の「業界の裏側見せちゃいますよ」的なものなんだけど、こういうの、今はやらなくなってるじゃないですか。「裏側見せます」って言ったって所詮はテレビ、ネットでダダ漏れしている情報にはかなわないですし。

でも、この番組ははっきり言って心ある若者からは嫌われている「テレビ」と「電通」を、アイドルがメタ的にいじり倒すことによって、8、90年代のときには触れられなかったものに触れてしまっている。言い換えると、テレビが最後のパンツを脱いでしまっている。だから、2013年に、テレビはここまで来てしまったんだなって思いましたよ。だって、どれだけオーディションの過程を見せても、女の子の涙を見せても、楽屋ネタや内輪ネタを見せても、「電通さん何とかしてくださいよ」って言葉はさすがに出ませんから(笑)。

福田 電通は今まで絶対、表に出てこなかったフィクサーですからね。基本的に僕と指原が喋った部分の8割はカットされているんですけど、そこには電通へのおもしろすぎるメッセージがいっぱい含まれています。ちょっと具体的には言えないんですが(笑)。

宇野 だから『指原の乱』ってテレビと電通がファンに嫌われていることを逆手に取ってネタにしたバラエティ番組なんですよね。ああ、まだこの手があったか、と思いました。AKB48って、テレビに対してだけは勝ちきれていないところがあるけど、指原みたいな人間を使うと、そこに突っ込めるっていうのがすごく面白い。

福田 電通さ~ん、なんて指原の口を通してしか言えないことですからね。他の誰が言っても別の意味を持っちゃうし、面白く伝わらない。

宇野 毎回、攻める相手も大物が多いですしね。

福田 個人的には、HKTの映画を作りたいって山崎貴監督のとこに行って「ザキヤマさん作ってくださいよ」って言っているときが最高に面白かった。山崎貴にザキヤマさんって言えるのあいつくらいですよ(笑)。指原の「『ガッチャマン』みたいな失敗したくないんですよね」の言葉で、現場でずっと不機嫌だったセカンドの監督さんが爆笑したのを見た時には、やったと思いました(笑)。そもそも最初に訪問した阿部秀司さんなんて、ROBOTの元社長ですからね。映画業界の人が見たら、お前何言ってるんだよって怒られかねない。

あと映画関係だと、指原が「東宝? ああ、バシャーってやつ!」とか言ってて。東宝はバシャーじゃないよ、それ東映だよって(笑)。あの舐めてる感じがいいじゃないですか。周りの映画関係者みんなが「東宝一人勝ちかよ」って思っているところに、「東宝、バシャー」ってアイドルが言い放つ。見る人が見たら「いいぞ、やれやれー」って感じですよね。

■カッコ悪いパンツの脱ぎ方はしたくない

宇野 この番組のルーツって福田さんの作品歴で言うと、『33分探偵』だと思うんですよ。『33分探偵』は堂本剛さんを、愛情のあるいじり方をすると最高に面白いだろうということをやっていた。電通に代表されるテレビ的なタブーというものを、愛をもっていじるという意味において。勢いのあった頃のテレビは、言ってみれば楽屋をバラすことでリアリティを獲得していたんだけど、パンツまでは絶対に脱がさなかったじゃないですか。だけど、監督としての福田雄一が『33分探偵』からついにパンツを脱がせ始めているのを目の当たりにして、逆に今テレビができることって、パンツを脱ぐことだけなんだなって思った記憶があるんですよね。

福田 カッコ悪いパンツの脱ぎ方だけはしたくないと、いつも思ってます。AKBの総選挙で1位になった指原がやるからこそ、一つIQが上がるというかね。アイドルを通してやるから良いのであって、同じことを芸人がやっちゃったら、すごくカッコ悪いですよ。それは秋元さんも分かっていたと思うんですけど。

宇野 なるほどね。「人」次第であると。

福田 ドラマにしろバラエティにしろ、結局人間そのものが持っている面白さを生かす以上に面白い方法って、ないと思うんです。「本当はこういう人なんですけど、まったく違ったものを演じました」よりは、人間性をそのまんまもらったほうが絶対にいい。

宇野 でもそれができるのって、福田さんと剛さんやさっしーとの信頼関係があるからですよね。福田さんのお仕事を拝見すると、作家とタレントの個人的な関係だけを武器にして、テレビ文化の限界点を突破しているんですよ。

福田 僕はやっぱり面白い人が好きなんです。好きだっていうだけじゃなくて、そばに行って、なおかつその人から何かを得たい。昔から、それはずっと変わらないですね。若い頃だとそれが極楽とんぼの加藤さんだったりするんですけど、今は指原っていう才能に自分のバラエティ脳をフルで使ってみたいなと。指原と収録中にカメラ前で喋ることによって、自分の瞬発力を試したい。だから『指原の乱』は、完全に自分のスキルアップのためにはじめたんです。ことコメディに関して言うと、普段の喋りが面白くない奴は、絶対に面白いものは書けない。自分はバラエティの一線級の作家さんや、番組に関わる芸人さんから吸収して磨いてきた。それを経て今は、どの芸人さんよりもどの作家さんよりも「コイツ面白いな」って思ってしまった指原から何かを得たいんですよ。

宇野 たとえば『勇者ヨシヒコ』と『指原の乱』って、一見すると全然違うアプローチなんですけど、根底につながっているのは個人に対する興味、愛情だと思います。『勇者ヨシヒコ』の場合、山田孝之くんに言ってみれば知的な茶番をさせることで、彼の面白さが引き出せる。『指原の乱』だと、今置かれている状況をひたすらぶっちゃけてメタ言及させていく。まず個人にフォーカスして、後から題材や手法を選んで行くって順番なんですよね。

福田 それはきっと、僕が劇団あがりだからです。未だに劇団を売りたいからやっているという根底は変わらない。30歳手前になるまで、彼らを売ることと、彼らがどうしたら面白くなるんだろうということしか考えてませんでした。こいつらが役者として大きくなれば劇団も大きくなるぞと。その次に芸人さんと仕事をするようになって、ココリコや極楽とんぼにどういう仕事をさせたら面白くなるんだろうと。だからドラマを作るにしても、キャストが決まらないと脚本が書けないのは当然なんでしょうね

■テレビに対する不満が創作動機

宇野 福田さんは今、フジテレビと一緒に滅ぼうとしている「テレビらしさ」を追求してきた作家だと思うんです。そのためには常にテレビの沈没それ自体を利用してきた、と結果的に言えるのかもしれないですね。

たとえば『ミューズの鏡』のようなパロディを通した「つくりもの」であることのメタ言及は80年代のフジテレビの十八番だった。でも、指原と平野綾って半分はテレビの“外側”の人じゃないですか。テレビの外からあのふたりを連れて来ることによってはじめて大映ドラマのパロディを通した「演じる」「つくりこむ」ことへのメタ言及が可能になってるんですよね。

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そして、『指原の乱』は、テレビが一番触れてほしくなかった広告代理店とか事務所の問題とかをアイドル本人に言及させることで、やはりかつてのフジテレビ的なものをアップデートしているわけですね。でも、今のフジテレビはそれが全部できない……

福田 昔のフジテレビって、「何してんだよお前」っていうムードの塊でしたよ。そのあとにニヤニヤって笑いがくっついてくるわけじゃないですか。僕はそれに対する憧れがあったんです。僕自身、お前何やってんだよ! って叱られたい欲が一番強いですし。『コドモ警察』にも、深夜に子どもを使って何をやってるんだって苦情が来ました。撮影は昼間にしてるんだからいいじゃないかと思うんですけど、そもそも自分としては怒られたいなって、仕組んだことだったんですけどね。今はBPOだったりコンプライアンスの問題がありますが、そこをかいくぐる方法は絶対にあるし。探っていきたいという気持ちは強いです。

宇野 『指原の乱』はじめ、最近の福田さんの仕事は特にそういうコンセプトが明確になっていると思います。

福田 単純にテレビに対して不満が大きいんですよ。その不満が、天然で吹き出しているだけ。ずっと不満が創作動機になっているんです。だけど、現状にカウンターを入れているっていうふうに言われるのは、すごく嫌なんですよ。それによって世の中を変えたいとかテレビを変えたいとか思っているわけでもないですし。だから宇野さんにつけていただいた「天然の革命児」ってキャッチフレーズがすごく気に入っていて。自分がやりたいからやっているだけで、カウンターではなく、常に自分発信なんです。

指原じゃないけど、正論も言い方によっては許してもらえるわけだし、なんでみんなそこをうまいことやる方法を探さないんだろうな、って思いますよ。みんなコンプライアンスを気にしていて安全なことばかりやってるでしょう。そこをかいくぐった面白いことって、絶対あると思うんですよ。最近いちばん悲しいのは、フジの『とんねるずのみなさんのおかげでした』が若干、情報寄りのコーナーを始めたことですね。

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福田 それが残っていたのが『指原の乱』ですよ。だって、誰も視聴率を知らないんですよ(笑)。ロケ中に電通のプロデューサーに最近数字どうなんですか? って聞いたら、どうなんでしょうねって。そんな番組ないでしょ、普通。


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