東京電力福島第一原発にたまる処理済み汚染水の処分方法について、県議会定例会は8日、有力視される海への放出に反対する意見書案の採決を見送り、閉会した。政府が処分方法を決めるめどは早ければ今夏とされるが、立場を明確にしないまま先送りした形だ。
「起立多数。よって、継続審査と決定しました」。7日の県議会総務委員会。共産党の1人をのぞき、自民党4人と県民連合3人が起立して意見書案の「継続審査」に賛成したため、採決の先送りが決まった。
案は、二つの市民団体の請願を受け、共産が提出した。国の小委員会が有力視した「海洋放出」に反対し、「地上保管の継続」を国に求める内容だ。
県議会では、案はまず委員会で採決する。多数決で「採択すべき」または「不採択すべき」となれば、本会議で採決する。「継続審査」となれば、本会議で採決はせず、持ち越される。
今回の案が次に審議されるのは9月定例会だが、県議会のルールで来年の6月定例会まで採決を先延ばしできる。そのため、国が処分方法を決めるまで採決されない可能性もある。
県議会で過半数の議席を持つ自民。幹部は「すでに可決された意見書がわれわれの意見の全てだ」と話す。これは自民が提出し、3月に全会一致で可決された意見書のことだ。関係者への丁寧な意見聴取と風評対策の強化を国に求めているが、「海洋放出反対」や「地上保管の継続」といった言葉はない。
別の自民県議は「放出への賛否を明確にできる時期ではない」「問題意識は理解できるので継続審査にした」と言う。だが、他の会派では「県漁連も全漁連も海洋放出に反対だ。同様の案を否決にはできなかったのだろう」「世論は放出反対の意見が強まった。衆院選への影響も考えたのでは」と臆測が広がる。
自民と同じ継続審査に回った第2会派「県民連合」は、国民民主党10人、立憲民主党2人、社民党1人、無所属5人で構成する。国政では野党の各党も、県議会では知事と協調する「与党」の立場をとってきた。
国民の幹部は「俺らは知事を支える県政与党。国に要求を投げ、様子を見ている知事の姿勢を尊重する。状況を見るための継続審査だ」と強調した。内堀雅雄知事は4月、政府が開いた会合で「風評対策と正確な情報発信」を求めつつ、海洋放出への賛否は示さなかった。その姿勢に足並みをそろえるのだという。
だが、県民連合の中でも温度差はある。立憲と社民の県議は6月下旬、知事に海洋放出への反対表明を求める文書をそれぞれ提出。今回の意見書案にも賛成する意向はあるが、国民の幹部は「会派としては『継続審査』にすることで理解を得られた」と話した。
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知事は今回の定例会でも、処理水の処分方法について自身の考えを示すよう、再三求められたが、明言を避け続けた。
6月25日の代表質問。共産の宮川えみ子氏は「知事の発言は重い。はっきりと海洋放出をやめよと言ってほしい」などと繰り返し求めた。だが、知事は「慎重な検討」を国と東電に求めるという従来の説明にとどめ、海洋放出への賛否を明言しなかった。
宮川氏は取材に「これまで復興予算の関係で、莫大(ばくだい)なお金を国からもらってきたし、これからももらわないといけないから、知事は意見を言えないのだろう」と推測する。県は、来年度からの5年間で必要になる復興関連の予算を少なくとも1・1兆円と見込み、国との調整を進めている。
処理水の処分方法をめぐっては、福島市の木幡浩・市長が会見で「福島県沖とか福島沿海とか言われない場所で海洋投棄するのが妥当」と発言。茨城県の大井川和彦知事は、海洋放出を有力視する国の小委の案について「容認できない」と反対姿勢を鮮明にしている。(福地慶太郎)