さかなのかげふみ @Spia23Tc

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65429230U0A021C2EA3000/

政府は東京電力福島第1原子力発電所にたまる処理水の海洋放出の決定に向け最終調整に入った。中国や韓国で放射性物質の影響を懸念する声もある。政府は国際基準に基づき処理しており問題はないと訴える。国際原子力機関(IAEA)も国際的な慣例に沿うと支持する。

菅義偉首相は21日の記者会見で「いつまでも方針を決めないで先送りすることはできない」と明言した。決定を急ぐのは福島第1原発の敷地内で処理水が増え続けているからだ。

2011年の東日本大震災に伴う津波の影響で、同原発は炉心溶融事故を起こした。現在も壊れた建屋に地下水や雨水が入り込み、高濃度の放射性物質に汚染した水が発生している。

東電はALPSと呼ばれる専用装置で主要な放射性物質を取り除いた処理水を敷地内のタンクに保管している。経済産業省は敷地内のスペースは限られ、このままタンクを増やし続けることはできないと説明する。

ALPSによる処理は放射性物質トリチウム(三重水素)が残る。様々な技術開発が進められているものの、経産省は「すぐに実用化できるわけではない」との見方を示す。原子炉等規制法に沿って定める基準の「1リットルあたり6万ベクレル」より大幅に薄めて処理する。


■中韓には懸念も

それでも海洋で隣接する中国や韓国は環境面で不安視する動きがある。

中国外務省の趙立堅副報道局長は19日の記者会見で「周辺国と十分に協議して慎重に決めてほしい」と述べた。「厳格で透明なやり方で情報を公開すべきだ」と訴えた。

韓国外務省は日本の正式決定前のため「注視する」と指摘するにとどめる。済州道の元喜龍(ウォン・ヒリョン)知事は日本政府に情報提供と協議を求める。「日本が拒むなら韓日両国で訴訟を起こす」と言う。

日本政府は国際的にも一般的な対応で、国際法上も問題がないとの立場をとる。

原子炉等規制法の基準は、国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告が被曝(ひばく)線量の限度を年1ミリシーベルトと設定しているのを踏まえて決めた。政府は毎日2リットルずつ飲み続けた場合に年1ミリシーベルトに達するとの見解だ。

ICRPは放射線の世界的な基準を作成する組織だ。勧告に法的な拘束力はないものの、多くの国が国際的な標準として受け入れて国内法に反映する。

IAEAも日本の検討状況に理解を示す。グロッシ事務局長は2月に来日した際、有識者でつくる経産省の小委員会が提示した海洋放出と水蒸気放出という処分方法について「技術的に実行可能で国際的慣例にも沿っている」と話した。

トリチウムを含む水は通常の原発や再処理施設でも発生する。フランスや韓国などでも排水として各国が定める基準を守って海に流している。

環境団体などは国際法に反する可能性に言及する。国連海洋法条約は「いずれの国も海洋環境を保護し及び保全する義務を有する」と記す。国境を越えて環境被害が生じないよう「すべての必要な措置をとる」とも明示する。

同条約は関係国に「海洋環境が汚染により損害を受ける差し迫った危険がある場合」などには国際機関や関係国に通報することも明記している。


■「汚染と言えず」

同志社大の坂元茂樹教授は「ALPSでの処理など同条約が定める『必要な措置』を取っている」と指摘する。処理水の濃度も国際的な基準に沿ったもので「汚染とは言えず通報義務は生じないと解釈できる」と解説する。

海洋汚染に関する国際法には廃棄物の海洋投棄を原則禁止するロンドン条約がある。ここでの投棄は陸上で発生したものを船の上などから捨てることを指す。陸上の施設から海洋に放出する場合は適用されない。

政府は方針決定後、大使館などを通じて各国政府に説明して理解を広げていく。茂木敏充外相は「これまでも処理水の取り扱いについて透明性をもって説明してきた。今後も国際社会、地元の皆さんに丁寧な説明をしていくことが必要だ」と語る。
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