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青森県むつ市にある使用済み核燃料の中間貯蔵施設をめぐり、電力大手10社でつくる電気事業連合会(電事連)による共同利用案が判明した。背景には関西電力が中間貯蔵施設の候補地選びで行き詰まっていることがある。老朽原発の再稼働問題と絡み、業界を巻き込んでの打開策となった。各社は増え続ける使用済み核燃料の保管先探しの解決にもつながるとみて、思惑を一致させた。
関電は運転40年超の美浜原発3号機(福井県美浜町)と高浜原発1、2号機(同県高浜町)の再稼働準備を進める。実現すれば国内初の老朽原発の再稼働となる。だがハードルとなっているのが、最終的に同意が必要な福井県から求められている中間貯蔵施設の県外候補地の提示だ。
2017年、関電の岩根茂樹社長(当時)が候補地を翌年中に示すと明言した。ただ18年1月、東京電力ホールディングス(HD)と日本原子力発電が出資するむつ市の施設を、関電が一緒に利用する方針が報道されると、むつ市の宮下宗一郎市長は「とうてい受け入れられない」「何も聞いていない」などと反発。浮上した話は立ち消えとなった。
その後、関電は「20年を念頭に候補地を示す」と約束しなおし、候補地を探ってきた。だが昨年には旧経営陣による金品受領問題が発覚、地元の信頼を失ってさらに難航する状況に。一方、福井県の杉本達治知事は2日の県議会でも「中間貯蔵施設の計画地点の提示は新しい課題の議論を行う前提。全ての条件に先んじるものだ」とし、関電は追い込まれていた。
今回の共同利用案は、業界全体として施設を活用する枠組み。むつ市とあつれきが生じた関電が再び直接交渉しないですむよう、電事連が表に立って橋渡し役を担うねらいだ。
業界として協力する理由にも、老朽原発の再稼働問題がある。政府は東京電力福島第一原発事故後、原発の新設・建て替えを認めておらず、現状では残ったものを使うしかない。全国で動かせる原発の数が減るなか、電力各社にとっては老朽原発の扱いが今後の経営に影響しかねない。関電が先行する老朽原発再稼働を後押しし、流れをつくりたいとみられる。(堀川敬部)
◆利害一致の電力業界 財政難の地元はだんまり
使用済み核燃料の行き先をどうするかは、電力各社にとって共通の課題だ。
政府の計画では本来、全国の使用済み核燃料を青森県六ケ所村の再処理工場に集め、ウランとプルトニウムを取り出して再び燃料にする「核燃料サイクル」が機能するはずだった。だが再処理工場は設備トラブルなどで完成時期が20回以上も延期。その間も使用済み核燃料は増え続けてきた。
現在、全国の使用済み核燃料の貯蔵量は、貯蔵可能量の7割を超える。主に各原発に備える「燃料プール」などで保管されている。関電でも再稼働が進むと6~9年程度でプールが満杯になる見込みだ。
国内で原発敷地外に建設された中間貯蔵施設は、今回利用が検討されているむつ市の「リサイクル燃料備蓄センター」のみ。東電が8割、原電が2割を出資して2005年に設立した「リサイクル燃料貯蔵(RFS)」が運営する。
施設では金属製の「キャスク」と呼ばれる容器に使用済み核燃料を入れ、空気で自然冷却する「乾式貯蔵」で保管。建屋2棟に計5千トンを最長50年間保管する計画だ。当初は10年に事業を始める予定だったが、東日本大震災や新規制基準への対応などで長引いている。
現時点では東電と原電の原発は1基も再稼働しておらず、使用済み核燃料を運び出す必要がない。施設は建物が完成したものの、搬入される燃料が見込めなければ事業開始は難しい。再稼働が進む関電などから燃料を受け入れられれば、早期の開始につなげられる。
一方、関電や東電、原電の3社以外の電力大手の多くは、原発敷地内に新たな貯蔵施設を計画・検討中。ただ進捗(しんちょく)していないケースもあり、むつ市の施設の共同利用は「業界にとっても利害が一致した」(大手電力幹部)との見方もある。(栗林史子、橋本拓樹)
◆関電の共同利用 むつ市は過去に幾度も不快感
今後はむつ市の対応が焦点になる。宮下市長はこれまで関電の使用済み核燃料の中間貯蔵先の候補地として同市が注目されるたび、「市民を不安にさせ、地域が傷つけられた」と不快感をあらわにしてきた。
11月27日の定例記者会見でも、関電側からの申し出などはないかとの質問に「ない」と答え、「立地協定の中に、東電と原電の使用済み燃料を受け入れると書いてある。それ以外の仮定の話には答えられない」とした。
青森県の三村申吾知事も今月8日の定例会見で、県に対する申し入れの有無を問われ、「知らない」と否定。申し入れがあった場合の対応も「仮定の話だから」と述べるにとどめた。
一方で、むつ市は深刻な財政難を抱え、財源確保のために使用済み核燃料に新たな税金を課す予定だが、それをめぐってRFSとも交渉が難航している。
市は今年3月、中間貯蔵施設へ搬入・貯蔵される使用済み核燃料に課税する新たな条例を制定。操業開始5年間で約94億円の課税を見込むが、RFSは「条例にある税率、税額では事業が立ちゆかなくなる懸念がある」として減免を求め、現在協議を進めている。(伊東大治、林義則)