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国内で運転開始から40年を超えた原子力発電所が初めて再稼働する。福井県にある関西電力美浜原発3号機(美浜町)と高浜原発1、2号機(高浜町)の再稼働に、杉本達治知事が同意した。40年超というと古く傷んだ状態を思い浮かべるが、実際は違う。主要機器は交換済みで新品に近い。年数ばかりを気にするよりも、検査や補修を徹底しリスクを最小化することが重要だ。
原発は巨大な構造物群だ。原子炉本体だけでなく蒸気発生器や復水器、タービンなど多くの大型装置や設備、無数の配管などからなる。他の構造物と大きく異なるのが放射線を浴びる点だ。熱を運ぶ液体が大小の管の中を大量に流れ続けることによる、金属疲労のような現象も無視できない。
高浜1号機は1974年11月、2号機は75年11月にそれぞれ運転を始めた。原子力規制委員会が1、2号機の運転期限を60年まで延長することを認めたのは2016年6月に遡る。その後、地震対策の補強工事や地元の同意を得るための取り組みが続いた。
◆主要部分は交換済み
16年の秋に、運転停止中の1、2号機のタービン建屋や原子炉格納容器内に入った。少なくとも見かけ上は、運転を始めてから40年という年月を感じさせない新しい設備が目に付いた。大部分が交換済みだからだ。
これまでに1基あたり数十億円かかる蒸気発生器や原子炉圧力容器の上蓋、復水器の配管などを交換した。大部分の構造物は交換後、点検をきちんとしていれば、運転期間の延長中は問題なく使えると考えられている。
◆計算と実測で劣化推定
ただ、心臓部にあたり核燃料が反応を起こす原子炉圧力容器と、これを覆う原子炉格納容器は交換できない。特に圧力容器は放射線や高温によってもろくなり、衝撃に弱くなる「経年劣化」が起きていないかチェックし、破損に至らないようにすることが重要だ。
圧力容器は厚さ10~20センチメートルの鋼鉄製で、表面は丁寧に仕上げられている。頑丈に見えるが、放射線の一種である中性子線が当たり続けると材料の粘りが低下して脆弱化する。時間とともにどのくらい脆弱化するかは、実験データなどをもとにした予測式で求める。
予測式の計算結果は圧力容器からあらかじめ取り出せるようにしてある試験片の測定値と比較し、ずれがないか確認する。高浜1、2号機ではいずれも4個の試験片を取り出して比べたところ、測定値と予測値はほぼ一致していたという。
さまざまな原因でできる構造物表面の微細な傷を、超音波や高周波の電流を使って検出する方法もある。原発を40年を超えて使うのは、こうした手法を総動員し異常の兆候を早い段階で検知できることが前提になっている。
◆AI駆使で新たな知見も
実は、もともと40年という運転期限に明確な科学的根拠はない。米国製の原子炉を日本に導入して以来、米国の基準を参考にしてきた。東京電力福島第1原発の事故後、国の規制で40年と定め、1回に限り20年延長して60年まで認めることにした。
材料が放射線から受ける影響を示すグラフを40年以降、そのまま60年まで延ばしても、脆弱性などに問題がある水準にはならないことからだ。米国では、さらに80年までの延長についても、計算式による確認などをもとに認めている。
もちろん、予測式は絶対ではない。材料や放射線の研究とともに改良が続いており、常に最新の知見を取り入れて精度を高めていく必要がある。
国内の原発のこれまでの検査データをすべて集約・活用し、人工知能(AI)によって金属材料への影響などを判断できるようになれば安全性はさらに高まるだろう。福島第1原発の事故データも生かせれば、過酷事故対策の強化に役立つ。
こうしたデータや分析結果を反映した新しい設計思想で、より安全な原発をつくることも可能になるのではないか。部品交換などをしながら運転期間を延ばし続けるよりも、安全性を高めた新しい原子炉に置き換えるべきだとの議論もある。どちらがよいのか、科学的な裏付けをもって判断できるようにしたい。