さかなのかげふみ @Spia23Tc

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB26DHX0W1A520C2000000/?unlock=1

原子力発電の燃料、ウランの国際価格が長期的な低迷から脱してきた。脱炭素にかじを切った中国を中心に原発建設の計画が進んでいるためだ。生産コストを下回る価格低迷が長引いていた影響で供給は減少。需給の引き締まりを見越し、ウランに関連する上場投資信託(ETF)などに投資資金も流れ込んでいる。

米調査会社UxCによると、酸化ウランのスポット(随時契約)価格は5月下旬時点で1ポンドあたり31ドル強。2020年8月以来の高値を付けた。16年12月には18ドルと04年以来の安値まで低迷し、昨年以降は30ドルを超える場面が目立つようになってきた。

直近で活況だったのは00年代半ばだ。原油価格の上昇などを背景に欧米で原発の建設計画が進み、07年には136ドルまで急騰した。当時は「原発ルネサンス」とも呼ばれた。その後、油価の下落や東日本大震災による原発事故などで原発推進の機運がしぼみ、ウラン価格も長期的な低迷を続けてきた。

再び価格が上昇しつつあるのは、国際的に脱炭素の機運が高まっているためだ。原発は発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しないうえ、天候に影響を受ける太陽光などと異なり、発電量が比較的安定している。中国は60年までにCO2排出量を実質ゼロにする目標を掲げ、25年までに原発の発電容量を4割増やす方針を打ち出す。中国企業がカザフスタンの鉱山会社に出資するなど、ウラン調達も積極的に進める。

中国以外でもインドやロシア、中東などで建設が進む。世界原子力協会によると、世界で建設中の原発は5月時点で56基、計画中は99基にのぼる。米国では新規建設は限定的な半面、既存炉の稼働延長が決まる事例は増えており「海外輸出も視野に小型モジュール炉(SMR)の開発も進んでいる」(海外電力調査会)。

経済協力開発機構(OECD)などがまとめている統計によると、年間需要は18年時点で5万9200トン、生産量は19年時点で5万4224トン。今後、需要拡大が見込まれる一方、ウランの供給は減少している。カザフスタン国営企業カザトムプロムの21年の生産計画は2万2500~2万2800トンで、16年に比べて8%少ない。カナダの生産大手カメコも市況低迷を背景に、同国にある世界最大規模のマッカーサーリバー鉱山の操業を18年から停止している。

カメコは今後も埋蔵量が尽きて操業を終える鉱山がある一方、「現在の市況では減少分を補う投資をする意味がない」と判断している。日本エネルギー経済研究所の横田恵美理主任研究員によると「価格が40ドル未満では採算が合わない鉱山が多い」。世界的に埋蔵量が豊富とはいえ、以前のような需給が緩んだ状況ではなくなってきた。

投資家の資金もウランや関連企業に向かっている。ウラン開発企業に投資する「グローバルXウラニウムETF」には年初から3億4700万ドル(約380億円)が流入。ロンドンに上場するウラン購入・管理会社のイエローケーキは投資家から集めた資金をもとに、1億ドル相当のウランを購入した。カナダのファンド運用会社のスプロットは、同国のウラン投資会社を米国に上場させる計画を進める。

投資マネーを巡っては、温暖化防止に貢献する事業を分類する欧州委員会の基準「EUタクソノミー」の適用対象に原発が加わるかも焦点だ。「対象となるかどうかで資金の集まり方が変わる」(商社)との指摘もある。

ウランは長期契約での調達が主体のため、短期的なスポット価格の上昇が原発計画やコストに与える影響は小さい。ただ、「脱炭素」で投資マネーが集まり、07年のような急騰劇となれば、発電費用が上がり中国などの原発計画に狂いが生じる可能性がある。(蛭田和也、コモディティーエディター浜美佐)
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