https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01712/071200023/
静岡県熱海市の伊豆山地区で発生した土石流災害を受け、国土交通省は土砂災害を引き起こす恐れのある危険な盛り土の抽出に乗り出した。今後1カ月程度で標高差が5m以上ある盛り土を明らかにして、自治体などへ情報を提供する方針だ。
熱海市の土石流災害では、逢初(あいぞめ)川上流部に、大規模な盛り土があった。その盛り土が雨で崩壊して被害を拡大させたといわれる。全国に同様の盛り土は至る所にあるものの、国は数や体積など全容をつかんでいない。赤羽一嘉国土交通大臣は2021年7月6日の会見で、「関係省庁と協力して、全国の盛り土の総点検をする方向で考えていかなければならないという問題意識を持っている」と話していた。
今回は国土地理院が2万5000分の1地形図を基に作製した2000年ごろまでの標高データと、08年以降に航空レーザー測量によって作製した標高データとを見比べる。その上で、標高が5m以上変わっている箇所を抽出する。
抽出後は許認可を受けていない「違法盛り土」などを明らかにして、優先的に対策を講じることになりそうだ。盛り土などの行為は、宅地造成や砂防など開発の目的によって許認可を受ける主体が異なる。そのため、各部署で対応方針を定めていく。
盛り土の危険度の評価手法については明らかになっていない。また22年度の予算措置についても今後の検討課題だ。
◆大規模盛り土の滑動崩落対策はまだ2自治体
なお宅地造成については、地震などによる滑動崩落対策として、大規模な盛り土の分布を20年3月に全自治体がマップで公表している。大規模な盛り土は約1000の自治体で5万1000カ所に上る。
例えば、谷を埋めた面積が3000m2以上の盛り土が存在すれば危険の有無にかかわらず公表される。今回の抽出では、標高差が5m以上という条件なので、これまで大規模盛り土造成地マップで公表されていなかった小規模な盛り土箇所も明らかになりそうだ。
ただし、宅地造成の滑動崩落防止事業では、危険の恐れがあると判定された盛り土は少ない。21年7月時点で、防止事業に進んだ例が2つの自治体しかない。地震のたびに宅地の盛り土が崩壊している事例が報告されており、事前に危険と評価される盛り土がもっとあってもおかしくないはずだ。今回抽出する盛り土では、どういう評価軸で危険度を判定するのかが注目される。
盛り土の安定性も重要だが、熱海市での土石流災害の教訓を踏まえて、盛り土がある場所の評価も重要になるだろう。川の上流部に位置するような盛り土は、一度崩れれば大事故につながりかねないからだ。