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東京電力福島第1原子力発電所事故を受けて設定された帰還困難区域で、居住再開に向けた動きが目立ってきた。2022年春に同区域の一部で避難指示解除を目指す福島県葛尾村が住民との協議で先陣を切り、同時期の解除を見込む同県大熊、双葉両町も秋から冬にかけて説明の場を設ける方針だ。
葛尾村は6月下旬、主な避難先の同県三春町で懇談会を開いた。帰還困難区域の野行(のゆき)地区の住民94人中28人が参加。同区域内で避難指示が先行解除される特定復興再生拠点区域(復興拠点)の放射線量、農業振興策などについて説明を受けた。
◆除染効果を検証
復興拠点内の宅地や農地、道路の除染はほぼ完了したが、川や山林の大半は除染されない。村は住民の放射線への不安に配慮し、学識者らの委員会を8月に設けて除染の効果を検証する。篠木弘村長は「避難指示の解除ありきではない。住民の声をよく聞きながら進めたい」と話す。
懇談会に参加した半沢富二雄さん(68)は除染を担う環境省の職員に「実際に暮らす人の立場になって考えてほしい」と訴えた。避難指示が解除されれば、再建中の自宅に住むつもりだ。近くの田んぼで5月、コメの試験栽培を始め、「やっと帰還の入り口に立った」と話す。
◆荒れた農地再生
地元の農業生産組合長を務める半沢さん。「荒れた農地を再生することで帰還者が増えれば」と願う半面、自分の努力が「無駄にならないか」との不安も頭をよぎる。地域の将来像を探るため、他の住民に帰還の意向などを問うアンケートを配り回答を待つ。
気がかりなことはほかにもある。地区内の復興拠点で除染が進んでも、拠点外は手つかずのままだ。「まとまりが強かった地域が分断された」と半沢さん。事情は帰還困難区域のある他の町村も同じで、町村長らは何度も拠点外の除染や避難解除の見通しを示すよう国に求めてきた。
国は「将来的に帰還困難区域の避難指示を全て解除する」と繰り返し、時期などの言及を避けてきた。自民党の東日本大震災復興加速化本部は7月、20年代に希望者全員の帰還を実現するよう提言。これを受けた国の対応が注目される。
復興拠点での居住再開に向けた動きは大熊、双葉両町でも本格化する。22年春の避難解除を目指して大熊町は秋から、双葉町は22年初から帰還準備のための宿泊を始める。両町は宿泊開始を前に住民懇談会を開く。
県内6町村にある復興拠点で、避難解除から5年後に目標とする居住者は計約8000人。だが、実現の見通しは不透明だ。原発事故から10年以上たち、住民は避難先で仕事や就学などの生活基盤を築いている。国は20年、福島復興再生特別措置法を改正。住民帰還に加え、移住者獲得を前面に打ち出す。
葛尾村の半沢さんは「年も年だし、自分の代でできることは限られる。地域再生への道筋だけでもつけたい」と話す。住民の語る復興の時間軸に、原発事故被害の根深さがのぞく。
(福島支局長 黒滝啓介)
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▼特定復興再生拠点区域 放射性物質の汚染度合いが高く、立ち入りが制限される帰還困難区域(約336平方キロメートル)のうち、除染やインフラ整備を先行して早期の避難指示解除や居住開始を目指す地域。国は2017~18年、福島県内6町村の計約27.5平方キロメートルを認定した。20年3月、JR常磐線の運転再開に伴い3町の計約0.5平方キロメートルを先行解除し、残りの地域も22年春から23年春にかけて解除する方針。