さかなのかげふみ @Spia23Tc

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01712/071900024/?n_cid=nbpnxt_mled_km

 渓流上流部で崩落した盛り土が静岡県熱海市伊豆山(いずさん)の市街地を襲った豪雨災害で、盛り土の開発許可などを指導していた県交通基盤部の都市局土地対策課と砂防ダムを担当する同部河川砂防局砂防課とで、不適切な盛り土の情報を事前に共有できていなかったことが判明した。

 県によると、土石流の起点で崩落した土砂の総量は5万5500m3。盛り土はその97%を占める。逢初(あいぞめ)川の最上流部にあった盛り土から400mほど下流側に「砂防ダム」を1基設置していたものの、大量の土砂を受け止めきれず、ダムを乗り越えていった。

 県が逢初川に砂防ダムを建設したのは1999年。コンクリート製で堤長が43m、堤高が10m、堆砂容量が4200m3だ。

 砂防ダムは、上流からの岩や流木などを含む土砂を受け止め、下流への被害を抑える役割を持つ。満杯まで土砂がたまった後も、傾斜角度が緩やかになって川幅が広がるため、土石流の勢いを弱められる役割を持つ。

 静岡県によると、砂防ダムは堆砂容量を大幅に超える約7500m3の土砂を受け止めていた。被害を軽減する効果は一定程度あったが、ほとんどが市街地へ流れ出た。

 逢初川の砂防ダムは「土石流危険渓流」の区域を踏まえて建設された。土石流危険渓流は、土石流が発生する危険があり、住宅などに被害を及ぼす恐れのある渓流だ。逢初川も指定されていた。

 土石流危険渓流の指定は50年以上前まで遡る。建設省の通達で、都道府県は土砂災害の発生の恐れがある「土砂災害危険箇所」の調査を1966年に始めた。土砂災害危険箇所には土石流危険渓流の他、地すべり危険箇所と急傾斜地崩壊危険箇所も含む。

 静岡県河川砂防局砂防課の西川茂課長代理は「砂防ダムの建設当時は、川の上流で土石流が発生しても防げるように設計していたはずだ」と推測する。砂防ダムの規模は基本的に、上流側に存在する不安定な土砂を考慮して決めている。砂防ダムの完成後に造成された盛り土が不安定な土砂として流れ出てしまった。


◆再三再四の指導も水の泡に

 盛り土行為を巡っては、これまで静岡県や熱海市が再三再四にわたる指導をしてきたことが分かっている。

 盛り土を造成したのは、当時、神奈川県小田原市に拠点を構えていた不動産管理会社だ。2006年9月に土地を取得。県の土地採取等規制条例に基づいて、土の採取計画届出書を07年3月に熱海市へ提出した。しかしその後、同社が土地の面積を勝手に改変したことが判明。県は林地開発許可違反と判断して、土地改変行為の中止と森林復旧を文書で指導した。

 08年8月に同社は是正を完了して、翌年に土砂の搬入を開始。その後も改変した面積の計算方法を市が指導するなどしたが、10年に造成工事がおおむね完了してしまう。

 県は事故後、盛り土について適切な排水設備を設置していない可能性があると指摘。不適切な盛り土が崩落につながった一因とみている。

 このような不適切な盛り土の情報は、他の部署に共有されていなかった。盛り土の下流側にある砂防ダムを管理する静岡県河川砂防局砂防課は、土石流が起こるまで、盛り土の存在は寝耳に水だったという。

 「盛り土を造成したことについて、県内の課同士で伝達することはまずない」。盛り土の林地開発許可などに関わった静岡県都市局土地対策課の担当者は、こう話している。

 ただし砂防課が事前に盛り土の存在を分かっていたとしても、対策を講じられたのかについては疑問が残る。熱海市では21年3月時点で、土石流危険渓流91カ所のうち砂防ダムなどの整備を終えた渓流は19カ所。整備率は2割ほどにとどまる。その状況で、上流に不安定な盛り土があるからといって、逢初川の砂防ダムを優先的に改良するには相当の根拠が必要だろう。

 それでも、砂防課は砂防ダムの集水域内における不安定な土砂を取り除くように、他部署へ働きかけていた可能性はある。また、雨によって盛り土が崩れる恐れがあることを事前に指摘していたかもしれない。オープンデータ化が進んでいる静岡県でも、庁内での情報共有に課題が残る。
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