さかなのかげふみ @Spia23Tc

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA290MU0Z20C21A7000000/?unlock=1

電力の安定供給にほころびが出てきた。2016年の小売りの全面自由化から5年たち、競争で余力をなくした電力会社が採算性の低い火力発電所を相次いで休廃止している。度重なる不祥事で原子力発電所の再稼働も進まない。再生可能エネルギーを大量に導入して脱炭素を進めつつ、足元の電力不足をどう乗り切るかが問われる。

「設備の保安の徹底と燃料の十分な確保をお願いします」。東京電力管内の送配電を担う東電パワーグリッド(PG)は6月、契約する発電事業者に火力発電所で予期せぬ運転停止が起きないように呼びかけた。夏本番に向けて電力需給の逼迫が予想されたためだ。

7月19日には17~18時に管内の電気の使用率が供給能力の96%に達した。95%以上は需給が厳しいと判定され、データを公表している19年以降で7月にこの水準を超えたのは初めてだ。

新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛でオフィスや飲食店など業務用の電力消費が低調な一方、巣ごもり需要で家庭向けは旺盛だ。東京五輪や高校野球で「エアコンをつけて自宅でテレビ観戦する人が増え、家庭の需要をさらに押し上げているようだ」(東電PG)。8月は年間で最も需要が高まるだけに「需給計画を絶えず見直しながら、ピークに備えたい」と警戒を強める。

厳しい電力需給の背景にあるのが、火力発電の縮小だ。大手電力会社は経営に必要なコストを電気料金に上乗せできる「総括原価方式」が自由化で崩れた。新電力との競争激化で消耗し、採算性の低い火力を休廃止している。経産省によると最も燃料費の高い石油火力だけで16~20年度に原発10基分の約1千万キロワットの設備がなくなった。

一方、12年開始の再生エネの固定価格買い取り制度で太陽光発電が急速に広がった。20年度は全国の電力供給の約2割を再生エネでまかなった。だが太陽光は日照が弱いとき、風力は風が弱いときにそれぞれ出力が落ちる。バックアップ電源が想定を超えるペースで消え、供給が安定しなくなっている。

一段と深刻なのは太陽光の発電量が減る冬だ。供給力は本来なら想定する最大需要を最低3%上回る必要があるが、22年1~2月は東電管内ではその余裕を持てない見通しだ。経済産業省などはいったん休止した液化天然ガス(LNG)火力発電所に再稼働を要請するなど対応を急ぐ。

経産省幹部は「テキサスの二の舞いになりたくない」と語る。米国南部テキサス州で2月、寒波を原因とする数百万件の停電が起きた。自由化が進んだ同州は再生エネの利用を急拡大したほか、送電網や卸電力市場が他州からほぼ切り離されている点など日本と似た点が多い。同州の電力網を管理する電気信頼性評議会の幹部は19年、経産省関係者に「自由化は本当に大変だ」と漏らした。

収入が保証されない自由化のもとで事業者は火力発電所など大規模投資をためらいがちだ。日本は20年に新電力などが発電所の修繕費や人件費など固定費を分担する制度を始めたが、新規投資を促すには力不足だ。

経産省は電力会社に収入を長期保証する仕組みも検討するが、新電力の負担増で電気代が上がれば自由化の趣旨に反する。安定供給と脱炭素の両立という難問への解はまだ出ていない。
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