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青森県むつ市が使用済み核燃料に課税する新税成立に向けて大きくカジを切った。このほど中間貯蔵施設の事業者に、課税額を大幅に下げる譲歩案を示した。原子力政策の停滞で施設整備が遅れ地域経済が疲弊するなか、交付金頼みから脱却し自前の税で安定財源につなげる。「原子力との持続可能な共存」を掲げ新税に関心を持つ立地自治体も多く、先の見えない核燃料サイクル政策に一石を投じそうだ。
むつ市は1月上旬、使用済み核燃料の中間貯蔵施設整備を市内で進める東京電力の子会社、リサイクル燃料貯蔵(RFS)に対し譲歩案を示した。搬入・貯蔵に5年間で最大93億円とする当初の課税案を5億8400万円に抑える内容だ。
方針変更について、宮下宗一郎市長は「国の原子力政策に翻弄され交付金頼みにも限界がある。自治体の確固たる財源としての税が必要だ」と語る。市は3月の市議会に新税に関連する条例改正案を諮り、可決されれば国と協議に入る。2022年度内にも総務相の同意を得られるようにする方針だ。RFSと税率などを巡り38回の協議を重ね難航していたが、一刻も早く税を成立することに軸足を移したといえる。
背景にあるのは、福島第1原子力発電所事故以降、原子力関連施設の整備が遅れ、立地自治体の財政に影響が出ていることだ。
青森県内では、むつ市の中間貯蔵施設の事業開始時期が昨夏、21年度から23年度に延期された。東通村にある東北電力の東通原発1号機は昨春、安全対策工事の完了時期を21年度から24年度へと5回目の延期を決めた。六ケ所村にある日本原燃の再処理工場は22年度上期完成を目指すが、26回目の延期となる可能性も残る。
こうした延期は、事業者が原子力規制委員会に申請する安全対策工事の審査などで想定以上に時間がかかっているためだ。入念な対策は欠かせないが、「スピード感に欠ける」(立地自治体の商工会)との批判も根強い。これには国の核燃料サイクル政策の停滞が大きくかかわる。原発で発生する使用済み核燃料を再処理工場に搬入し、そこでつくるウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)の使用計画が明確に定まっていない。全体像が示されないことが遅れにつながる。
整備遅れは、立地自治体の財政に大きく響く。関連の交付金が支給されているが、計画提示から施設建設が進む初期段階においてこそ手厚い傾向がある。青森県への主な電源3法交付金は11年度の191億円をピークに20年度には121億円と36%減少している。
地域経済への影響も大きい。立地自治体の市町村内総生産は10年から18年にかけ、むつ市が5%、東通村が61%、六ケ所村が27%、それぞれ減少した。「原発工事の関連業者の廃業・撤廃も影響している」(東通村)という。
「このまま整備が遅れれば、新税づくりというカードを切る可能性もある」。こう語るのは東通村の畑中稔朗村長だ。核燃料新税は自治体が独自に制定できる法定外普通税。東洋大学の井上武史教授は「立地自治体のメッセージを込めることができる」と語る。例えば原発を抱える新潟県柏崎市が制定した核燃料新税は、保管期間が長くなるほど事業者の負担が増す。「搬出を促すための経済的な誘因」(井上教授)にするものだ。
脱炭素に向け国は太陽光や風力など再生可能エネルギーの整備を急ぐ。原子力立地自治体からは「石炭、石油などエネルギーには衰勢があるが、生き残っていかなければならない」(むつ市の宮下市長)、「原発の稼働を知らないまま村民の原子力への理解が遠のく」(東通村の畑中村長)と危惧する声があがる。いずれも再エネを否定するものではなく、求めるのは「原子力との持続可能な共存」(畑中村長)だ。むつ市は新税で確保した財源を新たな産業づくりに充てる。
多くの自治体では住民の高齢化や人口減に直面する。関東学院大学の湯浅陽一教授は「原子力立地自治体で新税を検討する動きは今後広まるだろう」と語る。原子力政策の行方が不透明なままでは、税収が左右されるリスクが残る。湯浅教授は「エネルギー政策のなかでの原子力の位置づけを明確することが欠かせない」と指摘する。
(伊藤敏克)