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東京電力福島第1原子力発電所の事故処理や廃炉、賠償の費用が国が見込む総額約22兆円から膨らむ可能性が高い。東電は収益の一部を費用に回すが、再建計画の柱である柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働も見通せない。費用の膨張は脱炭素に向けた日本のエネルギー政策に影を落としかねない。
福島県大熊町の中間貯蔵施設へ向かう国道。事故から11年を迎える今年に入っても、放射性物質に汚染された県内の土壌などを積んだ大型ダンプがひっきりなしに走る。
用地買収などにすでに1.4兆円を費やした。今後30年間保管した後、県外で最終処分する方針だが処分先は未定。処理費用がどこまで膨らむか分からない。
費用の見通しが立たないのは除染も同じだ。原発周辺の除染に国は約3.2兆円を投じてきた。2017年には特定復興再生拠点整備事業として新たに帰還困難区域の除染や住めなくなった家屋の解体などに取り組むことを決めた。環境省幹部は「山林など、どこまで除染するか線引きはない」と話す。
国は20年にエネルギー対策特別会計に関わる法律を改正した。特会は複数の勘定にわかれている。原発の事故以来、中間貯蔵施設関連の費用を全国の原発立地自治体への交付金に充てる電源開発促進勘定から支出していた。不足を懸念し、本来とは異なる再生エネなどの施策に使われるエネルギー需給勘定から繰り入れられるようにした。
使ったお金は将来は元に戻すと改正法で定めている。ただ政府関係者は「事故費用が膨らみ続ければ再生エネ普及など他のエネルギー政策に向けた予算にも影響しかねない」と話す。
負担は16年の電力小売り完全自由化後に参入した新電力にも及ぶ。20年10月から送電線などの使用料である託送料に廃炉などの費用が上乗せされた。原発を保有していない新電力も負担することに対し、一部の新電力は「上乗せは違法」と訴訟を起こした。
原発事故に関連する賠償費用も増加する傾向にある。
廃炉を含めた事故処理全体の総額はいまなおみえない。炉心溶融を起こした1~3号機について、国は溶融燃料の取り出しを含め廃炉全体で8兆円とする試算を16年に公表した。燃料が溶け落ちた「デブリ」の管理や処分法など計画の詳細は固まっておらず、総額は35兆円超との民間試算もある。
国が費用の一部を回収する東電も頼りない。
東京電力ホールディングスは再建計画を21年に見直した。収益改善の柱と見込む柏崎刈羽の再稼働時期について、従来は早ければ19年度としていたが、テロ対策の不備などの不祥事で22年度以降に延ばした。その目標すら見通せない。
どこまで除染し、廃炉の廃棄物をどう処分するかによって費用は増減する。国は復興や廃炉の最終形について結論を出していない。一方で国は原子力を脱炭素の有力手段である「安価な電源」として活用する方針を掲げる。ならば、まずは今後の費用について逃げずに議論する必要がある。
(気候変動エディター 塙和也)