 山本鼎「むすめ」(『夢多き先覚の画家――山本鼎評伝』) |
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ベストテンを決めようと、特におもしろかった指摘をリストアップしていったら、
二十個くらいになってしまった。
そこでまずは、「校閲さんの仕事ってどんなの?」がとてもよくわかるこれを。
山本鼎というのはパンの会常連の画家で、作中では呑兵衛。
本当はいろんな業績のある人なんだけど割愛。
従弟に村山槐多がいたりする。
その評伝、『夢多き先覚の画家――山本鼎評伝』によると、
「二十五号の油彩画『むすめ』を夏の間に描き上げていたのだが」
という表記がある。
そこでぼくはこういう台詞を書いた。
【原文】
「鼎君、きみは二十五号の油画を完成させていたよね。確か、『むすめ』とかいう」
【指摘】
三十号のようです。
え? と添付資料を見てみる。
確かに、だいたい三十号のサイズになる。
「山本鼎アーカイブス」によると、油彩・カンバス 91.0×60.6(cm)とある。
このアーカイブは上田市山本鼎記念館の後継なので、信頼性が高い。
ぴたりこれ、という号数がないものの、確かに二十五号では足りない。
当時は違ったのかなと軽く調べてみるも、そうではなさそう。
尺寸法を用いた結果の誤差……と強弁するにはちょっと大きい。
こういうときは案外に悩む。
たとえば、鼎自身が「二十五号」と公言した可能性。
専門家の資料を優先するという考えかたもある。
しかし現実に絵はそうなっていない。
資料の巻末を見るが、参考文献の記載がなく、
「二十五号」の出所がたどれない。
でも、鼎の本を何冊も書いてる熱心な人だ。
そこで同著者の別の本『山本鼎・倉田白羊――生涯と芸術』を開く。
「いま山本鼎記念館に展示されている水彩「むすめ」は」
油彩が水彩になってしまった。
いったいどういうことなんだぜ!!
……というわけで、今回は資料を無視することにする。
【修正】
二十五号→三十号
たぶんこういうことなのかなって思う。
ある対象を熱心に調べすぎて、
もはやそれが血肉みたいになってしまったような人は、
挙げるべき参考文献などあってないようなものであるし、
そしてまた、人間だからこういうことが起きるのかなと。
問題は、今回参考にしたのがこの手の熱心すぎる人ばかりであることなのだった。
……と、このあたりはまた別記事にて。
とりあえずは、校閲さんの仕事とはどういうものか、
なぜそれが書き手にとって欠かせないか、わかっていただけたと思う。
なお10位という順位からもおわかりの通り、これは序の口。
(と、この一人企画、許可は得てますのでご心配なきよう。)
そして記事一つにめちゃくちゃ時間がかかってしまった。
はたして刊行までに間にあうのか!!