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火力発電の燃料費高騰で、大手電力が電気料金に転嫁できる上限を上回り自己負担を迫られそうだ。20日公表の燃料の輸入価格(速報値)から算定すると、大手10社のうち関西電力や中国電力など3社で3月から制度上限を突破することが分かった。燃料高の長期化で消費者の料金負担が上限に達し、大手電力の経営にまで影響を与える事態となる。
電力会社は「燃料費調整制度(燃調)」によって事前に電源構成などから設定した基準価格と、足元の燃料価格の差額を電気料金に自動で転嫁できる。ただ、大手電力の一部契約では燃料価格が基準価格より5割高い「上限価格」を超える場合、その月は上回った分を電力会社が自己負担しなければならない。燃調の上限は顧客の負担を過度に増やさないために設定された。
3月には大手10社のうち関電、中国電、北陸電力の3社で液化天然ガス(LNG)や石炭などの平均燃料価格が上限を超えるもようだ。北陸電は2022年2月時点で大手電力として8年ぶりに上限に達する。3月に複数社が上限を突破する場合、09年に現在の燃調制度ができて以来、初めての事態となる。
関電では22年3月分の燃料価格が原油換算1キロリットル当たり4万3600円程度と上限の4万700円を初めて突破するとみられる。燃料費は2月分から4000円強(約1割)値上がりする。同様に中国電でも3万9000円の上限に対して燃料価格が3万9400円程度となる見込み。北陸電も燃料価格が上限を1割程度上回る。
燃調の上限が設定されているのは原則、16年の電力全面自由化前に契約した家庭向けメニューの一部だ。燃料価格が上限を超えると顧客の電気料金はそれ以上は上がらず、電力会社が負担することになる。企業向けメニューではこの上限はもうけていないことが多い。自由化以降に参入した新電力会社も燃調制度を利用しているが、上限は基本的に設定していない。
北陸電と中国電では、上限が設定されているメニューを契約している顧客の電力販売量は、企業など全ての契約を含めた全体の電力販売量の1割程度にあたる。関電は非開示としている。一般的な電気使用量から推計すると北陸電と中国電の自己負担額は、それぞれ数千万円にのぼる可能性がある。
世界的な需要回復の動きもあり、原油相場は年初から上がり基調となっている。大手電力が長期契約するLNGの価格は原油に数カ月遅れて連動するため、燃料価格は当面は値上がり傾向が続く。
3月の燃料価格をみると四国電力や沖縄電力でも上限価格まで残り数%と迫っており、早ければ4月にも上限価格に達する可能性がある。東北電力、九州電力でも上限に対し9割程度まで値上がりしている。東京電力ホールディングス(HD)や中部電力、北海道電力は電源構成に占める火力発電の比率が高いこともあり、上限価格を高めに設定し、上限まで多少余裕がある。
大手電力の自己負担額がこのまま膨らんだとしても、燃調を反映する前の基礎となる電気料金を値上げするのは難しいとの見方が根強い。電力自由化前に設定したメニューは料金改定時に国の許可を得る必要があるからだ。
大手電力は11年の福島第1原発事故後、業績悪化を受けて相次ぎ値上げをしたものの、燃調を反映する前の基礎となる電気料金ではここ数年、値上げの動きはほとんどない。大手電力の幹部も「新電力との販売競争が厳しく、仮に値上げが認められてもさらなる顧客流出を招くおそれがある」と警戒する。電力会社が打てる手は限られている。
燃調は貿易統計を基に電気料金への影響額を計算する。22年1月を起点とした場合は21年10~12月の平均燃料価格を2カ月先の22年3月の料金に反映する仕組みだ。
20日の貿易統計から算定すると、3月分の電気料金は東電HDで2月比283円高の月8244円、関電は燃調の上限がある場合は55円高の7473円程度、上限がない場合は180円高の7598円程度となる。電気料金は16年の電力自由化以降で最高値圏にあり、家計負担も重くなっている。
(向野崚)