さかなのかげふみ @Spia23Tc

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【フランクフルト=深尾幸生】ドイツの電力大手が天然ガスの脱ロシアに向けて石炭火力発電の拡大へ準備を始めた。独発電最大手RWEは停止した発電所の再稼働や、停止が決まっている発電所の運転延長を検討する。ドイツ政府は脱石炭火力を温暖化対策の柱に据えてきたが、電力の安定供給を優先する中で、先送りを余儀なくされている。

RWEは2021年に運転を停止したハムやウェストファーレン、一部が非常用予備容量として待機中のノイラートなど独西部の複数の発電所で再稼働を検討する。同社がドイツで運転中の石炭火力の発電能力は約850万キロワットだが、最大350万キロワット増やせる可能性があるという。

マルクス・クレッバー社長は15日、石炭火力への回帰について「実施するかの判断は政府。数週間以内に決断を下すことになる」と指摘。そのうえで「どの発電所が再稼働できるか、計画より長く使い続けられるかを検証し準備している」と表明した。

独発電2位のEnBWも取材に「供給安定化のためにやむを得ない措置を検討する必要がある場合、あらゆる選択肢を検討することに協力する」とする。供給安定のための予備力となっている5基の石炭火力発電所について個別に検討する。

ドイツは脱原発と脱石炭を同時に進め、再生可能エネルギーとロシアからパイプラインで過半を輸入する天然ガスによる火力を電力の中心に据える戦略だった。だが、ロシアのウクライナ侵攻で戦略の見直しを余儀なくされた。英BPによると、欧州がロシアから購入しているガスの約3割はドイツが活用しており、ドイツの動向がロシアや欧州全体に与える影響は大きい。

ドイツ政府は液化天然ガス(LNG)でのロシア以外からのガス調達や、原発の稼働延長も検討した。LNGは国内初の輸入基地建設を決定。カタールとの長期契約も合意した。一方、原発は政府が、経済的なメリットが安全面などのリスクと釣り合わないと結論づけた報告書をまとめ、稼働延長論はしぼんでいる。エネルギー源の多様化のための残る選択肢として石炭火力への期待が高まっている。

ドイツでは現在、約2600万キロワットの石炭火力が稼働中だ。最近停止した発電所や予備力として控えている発電所をすべて稼働させれば、発電能力を約3割増やせる可能性がある。このうちどれだけが発電量の増加につながるかは不透明だが、仮に発電量も3割増えれば21年のガス火力による発電量の約半分をまかなえる。発電用途ではロシア産ガスへの依存低下に道が開ける。

運転のための人員確保などが必要なものの、原発と比べて素早く立ち上げられ、来年の冬に戦力となると期待される。石炭のうち、質の高い一般炭はロシアからの輸入が約半分を占めるのに対し、褐炭は自給可能だ。

電力会社以外でも化学大手のエボニックが自社で所有する石炭火力発電所を予定より長く稼働することを検討していると地元メディアが報じている。

天然ガスの価格が上昇した21年にすでに石炭火力による発電は増加している。英エンバーによると21年は前の年より23%増え、ガス火力と風力の減少を補った。

一方で、褐炭は温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)の排出が多く、平時は批判にさらされてきた。独メディアによると、今回の石炭回帰の動きもすでに一部の政治家から懸念の声があがっている。

連立政権の一角を占める緑の党出身のハベック経済・気候相は「今はロシアからの輸入依存度を一刻も早く下げることが急務」とエネルギー安全保障を優先する姿勢を強調している。ただ、これはメルケル前政権が38年と決めた脱石炭を30年に前倒しするという、緑の党の看板政策を下ろすことにもなりかねない。

電力会社にとって共通するのは、石炭火力に回帰しても「一時的なつなぎ」であるとの認識だ。ロシアのウクライナ侵攻で、ドイツが想定していたロシア産ガスをつなぎにして再生エネ主体に移行する戦略は崩れた。ガスと石炭でつなぐ期間をどれだけ短くし、CO2削減の軌道に戻せるかは再生エネ導入をどれだけ加速できるかにかかっている。
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