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新電力の事業撤退や新規契約停止が続く。3月下旬にはエルピオ(千葉県市川市)やウエスト電力(広島市)が燃料高騰などを理由に撤退を決めた。契約を他社に切り替える動きが各地で相次ぎ、北陸地方では北陸電力が供給を担保できないと引き受けを止めた。2016年4月の電力小売り完全自由化から6年、独占市場に競争を促す制度改革に綻びが出始めている。
「エルピオでんきの事業停止について」。3月下旬、エルピオの契約者に一斉にメールが届いた。電力供給が4月末で停止するため、他社への切り替えを求める内容だ。
東京都内在住の男性会社員(36)は突然の通知に困惑しつつ、慌ててほかの新電力に切り替えを申し込んだ。別の男性会社員(45)は「割安な価格で、プロパンガスも提供している信頼があり契約した。まだ困惑している」と不安げだ。
エルピオは16年に電力小売事業に参入した。東京電力グループより数%安い価格設定で契約者を増やし、顧客数は一時約14万件に達した。ウクライナ侵攻の影響で原油や液化天然ガス(LNG)の価格が高騰するなか、卸電力市場の電力取引価格も上昇。市場からの電力調達に頼るエルピオは採算割れの状態に陥り、事業撤退を決めた。
太陽光発電大手のウエストホールディングス(HD)は25日、子会社のウエスト電力(広島市)が4月末で電力小売りから撤退すると表明した。「ウクライナ侵攻や福島県沖の地震の影響で電力調達の先行きが見通せなくなった」(幹部)。21年11月時点の販売電力量は約1億3600万キロワット時と、新電力大手の一角だった。
新電力の事業停止が相次ぐ背景は卸電力価格の高騰だ。日本卸電力取引所(JEPX)の3月のスポット価格(1~30日分)の平均は1キロワット時当たり26.3円と前年同期比4倍超の水準だ。欧州の天然ガス価格の高騰に加え、3月の福島県沖の地震で火力発電所の一部が止まって需給が逼迫した。自前で発電所を持たず、卸市場から電力を調達する新電力にとって売るほど赤字の逆ざや状態が続く。
契約先の新電力が事業停止しても、すぐに電力供給が打ち切られることはない。電気事業法には「最終保障供給」という制度がある。強制的に契約切り替えを余儀なくされた需要家を対象としたセーフティーネットだ。全国で新電力の撤退が相次ぎ、正しい情報が伝わらないまま、切り替えに伴う混乱も起きている。
「契約申し込みが殺到し、十分な供給力を確保できない」。北陸電力は3月上旬、法人向けの電力プランで新電力からの契約切り替えの受け付けを止めた。受付停止は16年の小売り全面自由化後、初めてだ。新契約を全て受けるには卸市場から電力を調達する必要があるが、割高な料金設定になり、顧客のメリットがないと判断した。
資源エネルギー庁によると、新電力の登録数は3月4日時点で749社。販売電力量に占める新電力の割合は21年12月時点で21.7%に達した。電力10社の独占市場を開放し、異業種が多様なサービスを生んで競争を促す。16年4月の小売り全面自由化でうたった政府の所期の目標はある程度達成できたといえる。
自由化から6年たち、原油やLNGの価格高騰が常態化し、火力発電所のトラブルも頻発するようになった。現状を放置すればさらなる新電力の撤退は避けられない。新電力の経営状態をつぶさにチェックする。燃料の調達コストを平準化する。安定した電源構成を整える。電力で最優先すべきは安定供給だ。制度改革の見直しが欠かせない。
(清水涼平、柘植衛)