https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00138/041901021/?n_c
梅雨が近づいてきた。毎年のように繰り返される豪雨による土砂災害。2021年は、静岡県熱海市で土石流が発生し、30人近くが犠牲になった。
土石流の起点にあった盛り土は、地下水の集まりやすい谷に造られていた。ずさんな施工で排水状態が悪かったうえに、数日にわたる大雨で大量の地下水が供給され、大規模な崩落が起こったとみられている。
政府はこの惨事を受け、盛り土対策を強化。宅地造成等規制法を抜本的に見直す改正法案(盛土規制法案)を22年3月に国会に提出した。
法案を審議した22年4月6日の衆院国土交通委員会で、立憲民主党の小宮山泰子議員は、「熱海市の被災現場を視察した際に、盛り土で地下水の流れが見えにくくなったとの説明を受けた」と語り、地下水の状況を把握する観測井の設置について、国土交通省の見解を尋ねた。
斉藤鉄夫国交相は、「盛り土の安全性は地下水により大きな影響を受ける」と述べたうえで、次のように答弁した。
「盛り土の造成後も継続的に地下水の状況を把握するためには、観測井を設置し、中長期的に水位などの観測を行うことも考えられる。盛り土の技術基準や安全対策を議論する有識者会議で、観測井の取り扱いも含め、検討していきたい」
◆盛り土の問題は水の問題
「盛り土の問題は、詰まるところ、水の問題だ」ともいわれる。降雨による地下水位の上昇や、地震による液状化が、盛り土の滑動を引き起こす大きな要因になっている。
1995年の阪神大震災や2011年の東日本大震災、18年の北海道胆振東部地震など、過去の大地震では、宅地として造成された谷埋め盛り土が液状化して、住宅やインフラに大きな被害が出た。
「盛り土に水があるから、液状化も起こる。水がなければ、盛り土の問題も存在しない」。こう言い切る専門家もいる。地下水の状況を把握する観測井の設置は、盛り土問題の解消に向けた一歩になり得るという。
応用理学の技術士の資格を持つ斉藤国交相も、そのことを十分に理解しているだろう。そうであるならば、改正法の成立後に盛り土の技術基準や安全対策を決める際、政治家として、技術者として、リーダーシップを発揮すべきだ。
「熱海土石流」のような悲劇は二度と繰り返してはならない。