https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00134/090600324/
太陽光発電などの変動性再生可能エネルギー(VRE)導入で日本のトップを走る九州は、出力制御の実施でも先行している。再エネの拡大に不可欠な出力制御の価値と運用実態について、九州電力送配電・運用計画グループの平島晋一課長に聞いた
ー前編の「再エネ先進地・九州 太陽光の大量受け入れはこうして実現した」は、火力発電の低負荷運転とDSS(Daily Start and Stop)運転、関門連系線、さらに揚水発電などを活用して多くの太陽光発電を受け入れているというお話でした。それでも電力が余ってしまう分については太陽光の出力制御をしているのですね。
平島氏 その通りです。「再エネの出力制御」というと、ネガティブなイメージを持たれてしまうことが多いのですが、出力制御をすることで太陽光の接続量と発電量を増やすことができるという利点があります。
太陽光の接続量を増やすと、晴天時などに出力制御が必要になることは確かにあります。しかし、接続量を増やした結果として、赤い斜線の分だけ太陽光の発電量が増えるのです。同じように右側の曇りの場合でも、赤い斜線の分だけ発電量が増えます。つまり、出力制御を前提として接続量を増やすことで、全体で見れば太陽光による発電量が増加するのです。
出力制御をしている瞬間だけを見れば「せっかく発電できるのにもったいない」と思えるかもしれませんが、出力制御ができないと太陽光の接続量自体が制限されるというデメリットが生じます。「出力制御の仕組みを入れることで太陽光の導入量も発電量も増やせる」という点をぜひご理解いただきたいです。
◇2022年の出力制御率は4〜5%
ー出力制御を導入することで再エネの接続量も発電量も増やせるというのは、広く理解されていないと思います。ところで、これまでに再エネの出力制御をどの程度実施してきたのですか。
平島氏 九州本土で再エネの出力制御を初めて実施したのは2018年10月です。出力制御量が発電量に占める割合のことを「出力制御率」といいますが、2018年度の出力制御率は0.9%。2021年度は3.9%で、2022年度は4〜5%程度を見込んでいます。出力制御の回数で言えば、2018年度は26回でしたが、2021年度は82回となっています。
2018〜2021年度までは、九州エリアのみで再エネの出力制御が行われていましたが、2022年度からは、北海道・東北・中国・四国エリアでも始まっています。
ー出力制御の対象に家庭用の太陽光は含まれていませんよね。どのような発電所が対象になっているのですか。
平島氏 多くの住宅太陽光が該当する出力10kW未満の設備は、現時点では出力制御の対象ではありません。それ以上の出力の設備については、当社が連系を承諾した時期によって、適用される出力制御ルールが異なります。
2015年1月25日までに連系承諾した事業者は「旧ルール」と呼ばれ、出力制御の対象は500kW以上です。それ以後は「無制限・無補償ルール」と呼ばれており、10kW以上の発電所が出力制御の対象になります。
無制限・無補償ルールの発電所は、その名の通り回数に制限無く、無補償で出力制御ができます。一方、旧ルールの発電所は、無補償で出力制御できるのは年間30日までと定められています。
連系承諾の時期以外にも、「オンラインで出力制御ができるか否か」で事業者は2つに分かれます。
当社から遠隔操作で出力制御できる発電所を運営する事業者は「オンライン事業者」に区分します。発電所の現地での操作が必要な発電所を運営する事業者を「オフライン事業者」といいます。無制限・無補償ルールの発電所はオンライン化が義務づけられているため、すべてオンライン制御可能です。一方、旧ルールの発電所にはオフライン制御のものもあります。
九州で出力制御の対象となる太陽光は672万kW(2022年3月末時点)で、そのうち80% (537万kW)がオンライン制御可能となっています。
ー出力制御の指令というのは、いつ頃、どのようなタイミングで出すのですか。
平島氏 まず、気象予測データなどから電力需要や太陽光の発電量などを予測し、当該日の2日前に出力制御の可能性がある場合、ホームページでお知らせしています。
前日にも太陽光の発電量と需要を予測し、その結果を基に需給バランス計画を策定します。その結果、優先給電ルールにのっとって火力などを抑制しても供給力に余剰が出ることが予想される場合、17時頃にまずオフライン事業者に出力制御の指令(電話・メール)を出します。オフライン発電所には翌日の8時から16時に発電を止めてもらいます。
一方、オンライン事業者には、最新の気象情報や需給バランスを基にした出力制御のスケジュールを、実需給の2時間前に配信します。
前日に指令を出すオフライン事業者の場合、気象予測が当たらず、太陽光の発電量が想定よりも下振れして、結果として出力制限が不要だったということもあり得ます。ですが、既に指令を出しているので必ず8時から16時は止めてもらうという運用になっています。
オンラインの方は2時間前に指令を出すため、本当に必要な時間だけを抑制できるので効率的な運用が可能です。
◇出力制御の運用を見直し
ー出力制御する太陽光発電所をどうやって選ぶのですか。公平性の確保も必要になると思うのですが。
平島氏 その点については、資源エネルギー庁の系統ワーキンググループ(WG)で整理されています。
系統WGは「旧ルール事業者の出力制限が年間30日に達するか否か」を基準として運用方法を切り分けるとしています。年間30日に達しない場合は各発電所が「輪番で出力制御を交代する」ことで公平性を担保することになっています。
九州エリアもかつては、この輪番での出力制御を行っていました。しかし、九州の出力制御回数は2018年度の26回から2021年度の82回と増加しており、旧ルール事業者の出力制御も30日を超える見込みになっています。
この状況で輪番による出力制御を続けると、旧ルール事業者の出力制御日数が年度の途中に上限の30日に達してしまいます。すると上限到達以後は無制限・無補償ルールの事業者だけで出力制御をすることになり、必要な制御量(抑制量)が確保できない可能性があります。
そうした事態を避けるために、2021年度からは「無制限・無補償ルール事業者の一律%制御(出力上限値の指定)」を導入しています。この方法は「30日を超過する見込み」の場合に備えて系統WGが定めたものです。
この運用方法では、%単位の一律の出力制御によって無制限・無補償ルールの事業者間の公平性を担保します。同時に、旧ルール事業者の30日を年間通して活用することで必要な出力制御量を確保します。
当社では年間の出力制御回数をシミュレーションし、「大体この月に何回ぐらい出力制御がありそうだ」という見通しを持っています。そこから逆算して「旧ルール事業者の出力制御が○月以降に20日ぐらい必要だから、○月までは10日ぐらいにしておこう」といったように計画して、旧ルールの30日を最大限活用しています。
ー太陽光や風力を受け入れるには精度の高い気象予測も重要だと思います。どのように活用されていますか。予測の精度は毎年上がっているのでしょうか。
平島氏 気象予測会社によって、「大外しはない」とか「ある条件下だと精度が高い」といった特徴があります。当社では現在、3つの気象予測会社に日射量の予測を依頼しています。その日射量から発電出力への換算は当社内で行っています。
さらに3社を過去の予測実績などで評価しながら、例えば6:2:2のような感じでそれぞれに重み付けをして、加重平均することで1本の予測線にしています。それを踏まえて2時間先の出力制御量を判断しています。
予測精度が上がれば無駄な出力制御が減少し、必要最低限の制御で済むようになります。予測精度の向上には限界があるのかもしれませんが、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の実証事業などで、精度向上の研究も進められているので、研究の成果を業務に反映していこうと思っています。
◇VREのさらなる拡大に向けて
ー2050年カーボンニュートラルに向けて、今後さらに太陽光や風力などのVREが増加していくと思います。デマンドレスポンス(DR)や広域連系の強化など、今後のVRE拡大への対応策について聞かせてください。
平島氏 2022年12月からは「オンライン代理制御」の運用を開始します。この制度はその名の通り、オンライン事業者がオフライン事業者の出力制御を代替するものです。
オンライン代理制御を利用したオフライン発電所は、出力制御の指示を受けても発電を継続します。その代わりに、オンライン事業者が代理で出力を制御し、オフライン事業者から一定の金銭を受け取るという仕組みです。
オフライン制御は前日に指令を出し、8時から16時まで固定で発電を止めなければなりません。オフライン事業者にとっては、手動で発電を止める手間もありますし、前日の気象予測とのズレにより、止める必要がないのに止めざるを得ないという無駄が発生する可能性もはらんでいます。オンライン代理制御を利用することで、その手間や無駄が減らせるメリットがあります。
それ以外では、これまでも実施している大容量蓄電池や地域間連系線の活用、発電所のオンライン化の推進、再エネ出力の予測精度の向上により出力制御量の低減に取り組みます。DRは太陽光の発電量の多い昼間などの需要創出効果を期待できるため、再エネの出力制御量の低減に有効だと考えています。
太陽光は出力変動が大きい電源ですので、大量導入がさらに進む場合には、電力需給を一致させるための調整力の確保も課題になります。国の審議会で議論がされているように、蓄電池や水素製造というエネルギー貯蔵技術の活用、EV(電気自動車)やヒートポンプ給湯器などによる需要のシフトといった動きにも対応していきたいと思います。
青柳 聡史