https://kahoku.news/articles/20230105khn000024.html
東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)に関する核燃料税交付金について、原発5~30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)に入る東松島市が宮城県に交付を求めている。県は立地2市町以外に交付対象を広げることに否定的だが、市は「東京電力福島第1原発事故以降、原発周辺自治体の負担が増している」と見直しを訴えていく。(石巻総局・松村真一郎)
「原発事故によって原子力災害への備えが周辺自治体にも広がった。立地自治体のみ優遇すればいいわけではない」。人口の約92%がUPZに住む東松島市の渥美巌市長は主張する。
市と登米市、涌谷町、美里町、南三陸町のUPZ5市町は、立地2市町と同様に女川原発の重大事故に備えた避難計画策定や避難訓練などに取り組む。こうした対策に携わる職員の人件費などを賄うため県の核燃料税交付金を5市町にも配分するよう求める。昨年12月下旬、村井嘉浩知事宛ての要望書を県に提出した。
県は原子力防災に関する資機材購入費や訓練経費に充てる別の交付金制度の存在を挙げて「対象拡大は考えていない」(企画総務課)というスタンスだ。
核燃料税の次期課税期間(2023年6月~28年6月)に税率を現行の15%相当から17%相当に引き上げる。年間税収は約1億8000万円から約5億600万円に増える見通しだが、増収分は重大事故時の避難道路整備といった女川原発の立地に伴う安全対策事業に充てる方針だ。
渥美市長は「自治体職員の人件費に対する交付金制度はなく、増えた税収を活用して人件費くらいは出してほしい」と強調。東松島はUPZ5市町のうち人口割合が最も大きいとして「市が先導役となって交付対象を広げてもらうように動きたい」と話す。
[核燃料税交付金]原発などを抱える道県が事業者に課す税の収入を立地自治体などに交付する。稼働する原子炉の核燃料価格に応じて徴収する「価額割」や原子炉の熱出力によって課税する「出力割」などがある。宮城県は東北電から年間約1億8000万円を徴収し、女川原発が立地する女川町と石巻市に1割(約1800万円)ずつ交付。残りは県の一般財源に入る。
▼防災担当職員の人件費に充当 島根原発周辺自治体
福島第1原発事故後に原子力防災対策の範囲が広がったことを受け、核燃料税交付金の対象を原発周辺自治体に拡大した県もある。
中国電力島根原発(松江市)を抱える島根県は2015年度、交付対象に立地する松江市のほか、UPZに入る出雲、安来、雲南3市も加えた。
県が中国電から徴収する核燃料税約7億5000万円のうち、2割(約1億5000万円)を交付金として4市に配分。原発からの距離や人口規模に応じて配分率は松江市が6割(約9000万円)、出雲市が2割(約3000万円)、安来、雲南両市が1割(約1500万円)ずつとなっている。
出雲市によると、交付金は原子力防災担当職員2人の人件費や関連資機材の整備費に充てる。防災安全課の担当者は「周辺自治体も立地自治体と同じく対策を取らなければならない。交付金はメリットがある」と話す。
全国原子力発電所所在市町村協議会によると、21年4月時点で原発が立地する全国13道県の中で核燃料税を廃止した福島を除く12道県が事業者に課税している。このうち北海道、青森、茨城、福井、静岡、島根、愛媛、佐賀の8道県は立地自治体に加えて周辺自治体にも同税を財源とする交付金を配分している。